カーボンファイバーと環境

カーボンファイバーとは、アクリル繊維や石油・石炭などの副生成物であるピッチを高温で炭化して作成した繊維のことで、JIS規格では炭素の質量比が90%以上であることと規定されています。カーボンファイバーの材料となる有機繊維には炭素原子以外にも、水素原子や窒素原子などさまざまな物質が含まれていますが、高温加熱処理をすることで炭素原子以外の不要な物質を排除します。

製造されたカーボンファイバーは髪の毛の直径の10分の一程度で数千本~数万本単位として使用しますが、樹脂などと組み合わせて用いられることがほとんどです。

カーボンファイバーを使用した材料は、鉄やアルミなどよりもすぐれた力学的特性を有するために構造材などとして使われます。そして、カーボンファイバーの炭素原子の比率が極めて高いことから、耐熱性や耐薬品性にもすぐれているために構造材以外の用途にも使用されています。

このような特性を備えているのは、炭素がグラファイト構造で強固に結合をしているためです。6つの炭素原子による六角形が網目のように連続した形状をしたもので、同じ炭素で構成されるダイヤモンドと似た構造をしています。

工場設備

カーボンファイバーは原料によって分類され、アクリル繊維からつくられるものをPAN(パン)系カーボンファイバー、石油・石炭などからつくられたものをピッチ系カーボンファイバーといいます。現在製造されているカーボンファイバーのほとんどはPAN系カーボンファイバーで、ピッチ系カーボンファイバーの製造量は一割以下ともいわれています。

その他にも、活性炭素繊維や気相成長炭素繊維などの種類もありますが、構造材として用いられることはありません。原料や製造方法によってカーボンファイバーとしての特性は異なり、信頼性が要求される箇所には高品質で高価なカーボンファイバーが用いられ、あまり信頼性が要求されない場合は汎用的なカーボンファイバーが使用されます。

<目次>

1)カーボンファイバーの価格

2)カーボンファイバーの加工方法
3)カーボンファイバーの環境への影響
4)カーボンファイバーのリサイクル



■1.カーボンファイバーの価格

原料となるアクリル長繊維や石炭タールなどを加熱処理して不要なものを取り除いて、カーボンファイバーを作りますので、最終的に製造されるカーボンファイバーよりも多くの原料が必要となります。また、製造工程では、環境や温度を変えてじっくりと熱処理しなくてはなりませんので、専用の設備も必要になりますし手間も掛かってしまいます。

そのため、カーボンファイバーを用いた製品の価格は、高いものとなってしまいます。それでも、製造量が増えたことによって以前よりはカーボンファイバーの価格も低下してきましたし、今後さまざまな最新技術が導入されることで、さらに価格が低下すると見込まれています。

しかし、現在でも、カーボンファイバーとエポキシ樹脂を組み合わせたCFRPでは、ドライカーボンとウェットカーボンという価格の違う製品が販売されていますので、予算と価格に応じて製品を選ぶことが可能です。

ドライカーボンは加圧ができるオートクレーブで成型されますので、高価な設備と出来上がるまでに時間が必要となることから価格が高くなりますが、軽量でありながら大変強度のある材料となっています。高価なドライカーボンは、レース用などの自動車や航空機などに使用されます。

ウェットカーボンはカーボンファイバーを使った素材に樹脂を塗りこんでから自然乾燥させて作成するもので、ドライカーボンほどの強度が備えていませんが、製作工程が簡単でオートクレーブのような高価な設備が不要であるために価格が安くなっています。市販の自動車パーツなどに、ウェットカーボンが使われます。

CFRPを使う場合でも、強度が必要な箇所にはドライカーボンを選び、比較的強度が問題にならないような箇所にはウェットカーボンを選ぶようにすれば経済的にCFRPを使うことができるでしょう。カーボンファイバーを使用した製品は、原料と製造方法によって性能と価格が異なりますので、要求される性能を把握して適切な製品を選ぶことが重要となります。


■2.カーボンファイバーの加工方法

カーボンファイバーは、原料を高温処理し炭化させて作ります。異なる環境下で何度も加熱を行いますが、原料や加熱方法の違いによってカーボンファイバーとしての特性も違ってきます。大変に強度の高いカーボンファイバーですが、表面にキズがつくと切断しやすくなるために、複合材料の強化材料として使用されることがほとんどです。



カーボンファイバーと樹脂を組み合わせて作るCFRPは、自動車・航空機・建築物の構造材としても用いられますし、炭素などとの複合材料であるC/Cコンポジットは、航空機のブレーキやロケットのノズルに使用されています。CFRPのようなカーボンファイバーを使った複合材は、鉄やステンレスと同じように機械加工を施して目的に形状にすることができます。

機械加工をする時は、工具が長持ちするように超硬やダイヤモンドを使い適切にメンテナンスをしなくては、思う通りの加工をすることができません。また、実際に加工をする時は、カーボンファイバーの向きなどにも注意して作業をしないと、効率的に可能をするのが難しくなります。

金属と同じように加工を行いカーボンファイバーを切断したことで材料に歪みが生じたり、強度が低下してしまうこともあるのです。そのため、他の材料の加工の経験が豊富でも、カーボンファイバーを使った材料についての知識や経験がないと要求される内容の加工ができないこともあります。

さらに、カーボンファイバーは加工中に、粉塵などが発生しますので、人体や設備に障害が出ないように配慮する必要もあります。粉塵が人体に悪い影響を与えるのを防止するために、めがねやマスクを着用することは当然ですし、設備に障害・感電が起こらないように作業場所を清潔に保つようにしなくてはなりません。

このように各分野で広く普及したカーボンファイバーを用いた材料は、さまざまな加工をすることが可能ですが、カーボンファイバーの性質を理解した上で扱わないと、本来の特性をいかすことができないのです。


■3.カーボンファイバーの環境への影響

世界的に環境を保全する活動が急務になっていますので、単に性能が良いだけではなく環境にも優しい材料が求められていますが、カーボンファイバーは今まで使用されてきた材料と比較して環境に与える負荷の少ない材料と言われています。具体的な環境への負荷を評価する方法にLCAライフサイクルアセスメントがありますので、この手法を用いてカーボンファイバーを評価してみましょう。

LCAライフサイクルアセスメントは、個別の商品についての製造・輸送・販売・使用・廃棄・再利用までの各段階の環境負荷を明確にして、客観的に評価する手法です。特定の段階の環境負荷だけを評価したのでは、他の段階で大きな環境負荷を発生する場合は正確な評価とならないために、LCAライフサイクルアセスメントが使用されるようになりました。

特にカーボンファイバーの使用による環境への負荷の影響が大きい自動車と航空機の場合を考えてみましょう。自動車と航空機の原料採掘からカーボンファイバーの使用・廃棄までを10年間のライフサイ クルで検討してみました。

自動車にカーボンファイバーを使って車体を3割程度軽量化するとカーボンファイバー1トンにつき50トンの二酸化炭素を削減する効果があり、航空機にカーボンファイバーを使って機体を2割軽量化すると1400トンの二酸化炭素の削減効果があるのです。

これは、カーボンファイバーの製造過程で材料を高温処理などする際に、二酸化炭素が排出されるものの、自動車と航空機の軽量化による二酸化炭素の削減効果がそれを上回ることを意味しています。このようにLCAライフサイクルアセスメントみより、全体的なカーボンファイバーの環境負荷を評価してみると、環境に優しい材料であることが明確になります。

しかし、カーボンファイバーも、より効率的なリサイクルの方法を確立したり、製造方法を改善するなどして、環境への負担を軽減することが期待されています。




■4.カーボンファイバーのリサイクル

カーボンファイバーの製造過程において、世界的な課題となっている地球温暖化の原因である二酸化炭素を排出しますが、カーボンファイバーを用いて作られた製品の製造から廃棄までのライフサイクルを考えると、軽量化の効果によって二酸化炭素の排出量を大幅に削減することが可能とされています。

そのため、地球環境問題の対策の一つとして、航空機や自動車などへのカーボンファイバーの利用が増大しています。しかし、カーボンファイバーの使用量が飛躍的に増加をするにつれて、鉄より強く耐熱性もあるカーボンファイバーのリサイクルについて懸念する意見もありましたが、技術革新とノウハウの蓄積によって効率的なリサイクルも可能となっています。

一般的なリサイクルのフローは、製品の回収を行った後に選別をして切断破砕や熱分解を行いますが、従来の材料よりも壊しにくく熱にも強いカーボンファイバーは、新たなリサイクル方法が必要となります。特にカーボンファイバーを構造材として使うために樹脂などと組み合わせた複合材料は、生産量も多いだけに正しいリサイクルの方法が求められました。

カーボンファイバーと樹脂の複合材料は、加熱することで軟らかくなって比較的簡単にカーボンファイバーと樹脂を分離できる熱可塑性型と、カーボンファイバーと樹脂を高温で焼き固めるために分離するのが困難な熱硬化性型の2種類があります。

カーボンファイバーのリサイクルを容易にするために、熱可塑性型の材料を積極的に使用する業界もありますが、熱硬化性型の材料のリサイクル方法についても研究が進み再利用できる方法が確立しつつあります。

今までは廃棄して、埋め立てて処分するしかないと考えられていたカーボンファイバーもリサイクル可能となってきたのです。このように、今後使用の拡大が見込まれるカーボンファイバーは、使用後の処理方法に関しても研究開発が盛んに行われて、より環境に優しい材料となっています。



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