カーボンファイバーの特性

「カーボンファイバー(炭素繊維)」とは、文字通り炭素からなる繊維です。炭素の含有量は標準弾性率の炭素繊維で90%以上、高弾性率の炭素繊維ではほぼ100%が炭素で構成されています。ちなみに、炭素以外の主な元素は窒素です。

カーボンファイバーは、「ポリアクリロニトリル(PAN)繊維」あるいは「ピッチ繊維」といった有機繊維を何度も高温で蒸し焼きにし、炭素以外の元素を脱離させて作ります。市販されている炭素繊維の90%以上は、PAN繊維を原料とする「PAN系炭素繊維」ですが、これは性能とコスト、使い易さなどのバランスがピッチ系炭素繊維に比べて優れているためです。

カーボンファイバーの特長は、何と言っても軽くて強いことです。比重が1.8前後と鉄の7.8に比べて約1/4、アルミの2.7あるいはガラス繊維の2.5と比べても有意に軽い材料です。その上に強度および弾性率に優れ、引張強度を比重で割った比強度が鉄の約10倍、引張弾性率を比重で割った比弾性率が鉄の約7倍と大変優れています。そのためカーボンファイバーは、従来の金属材料を置き換える軽量化材料として広く普及するようになっています。

さらに、疲労しない、錆びない、化学的・熱的に安定している、といったさまざまな特性がある上に、厳しい条件下でもそれらの特性が長期的に安定している、信頼性の高い材料なのです。このような特性を活かして、カーボンファイバーはさまざまな用途で活躍しています。

その用途は、まず、圧力容器、自動車、風車、船舶、土木建築など生活の中のさまざまなシーンで利用される「一般産業用途」、軽くて使い易く、高性能な用具が追求される「スポーツ用途」、空や宇宙を飛ぶために、軽量で高性能かつ安全な材料が最も求められる「航空宇宙用途」です。特に、旅客機の胴体・主翼・尾翼などの構造材料にカーボンファイバーが使われていることは有名ですが、軽量で燃費が良く、デザインの許容幅が大きい機体を製造できるようになりました。これらの用途は、カーボンファイバーとその成形技術の進歩とともに、成長・拡大を続けています。


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<目次>

1)カーボンとカーボンファイバーの違い
2)カーボンファイバーの強度
3)カーボンファイバーの歴史
4)カーボンファイバーを使った製品

■1.カーボンとカーボンファイバーの違い

カーボンファイバーは90%以上がカーボンで構成されていますが、カーボンとカーボンファイバーでは特性に大きな違いがあります。このような違いがあるのは、それぞれの構造が原因となっているのです。カーボンは元素としての炭素のことで、カーボンファイバー以外にも黒鉛やダイヤモンドの原料となります。

カーボンの構造は、規則性も少なく強固な結合もないために壊れやすくなっているのです。一方、カーボンファイバーは、カーボンを主とした原料を高温処理することで、原子が規則正しく配列して網目状の構造を保ったものが何層も重なり合います。その結果、鉄よりも軽くて強い材料となって、従来の材料の代わりに使用することができます。

この軽くて強いという性質が、カーボンファイバーを非常に有用な材料とされる理由なのです。歴史的にはカーボンは有史以前からその存在を知られていて、世界中でいろいろな形で使用されていました。さらに近代になってからは、カーボンの熱的・化学的にも安定性が高さに加えて導電性にも注目されるようになると、半導体産業などで盛んに使われるようになってきました。その他にも、自動車などのタイヤの補強材として使われたり、塗料や印刷インクの材料としても役立っています。

カーボンファイバーも、19世紀末にトーマス・エジソンが使用してから100年以上の歴史がありますが、本格的に生産されるようになったのは20世紀の中頃です。そのため、まだまだカーボンファイバーの製造方法や使用方法については改善の余地があるので、より有効に活用できるように研究開発が続けられています。今後さらに性能や良くて、低価格で利用できるようなカーボンファイバーが製造されることでしょう。

カーボンファイバーとカーボンのどちらも、他の材料にはない特性を持っているために、今では生活に欠かすことのできないものとなっていますが、特に強度のあるカーボンファイバーはさらに使われる分野が広がるものと期待されています。


■2.カーボンファイバーの強度

カーボンファイバーにはいくつものすぐれた点がありますが、軽くて強いことが最大の長所と言えるでしょう。鉄と比較すると比重で4分の1、比強度は10倍となっていますし、厳しい環境下でも特性が安定した特性であるために信頼性の高い材料であるといえます。鉄よりも高い強度を有するのは、カーボンファイバーがグラファイト構造と呼ばれる分子構造をしているためで、炭素の同素体の一つであるダイヤモンドと似た構造になっています。

この独自の構造が、カーボンファイバーをすぐれた材料にしているのです。カーボンファイバーの強度と構造の関係を調査してみると、引張試験を行った時に破断する箇所は、表面や内部の欠陥がある場所であることが分かっています。理論的にはより高い強度が得られる筈なのに、欠陥や製造方法の問題によって、十分な強度が得られないこともあるのです。

そのため、カーボンファイバーの強度を維持するために、製造工程で加熱する温度や時間などを調節して、欠陥がなくなるような工夫がされています。さらに、カーボンファイバーの結晶の大きさや繊維軸に対する傾きなどにも配慮する取り組みも進んでいますが、製造方法が改善されることで弾性率など他の特性も良くなるというメリットがあります。

弾性率は物質の変形しにくさを表す値で、構造材に用いられる材料には弾性率の高いことが求められるのです。その結果、カーボンファイバーの強度などは年々向上するようになって、信頼性の高い材料となりました。信頼性が高く強度のあるカーボンファイバーは、鉄などに代わって自動車や航空機の構造材に採用されるばかりではなく、いろいろな産業にも利用されています。

カーボンファイバーの性能と信頼性が高まることで、今まで使われてきた材料の代わりとなるだけではなく、新しい製品の誕生にも役に立っているのです。これからも、カーボンファイバーの強度が高くなるように改良が続けられることで、より使いやすい材料となることでしょう。


■3.カーボンファイバーの歴史

現代社会になくてはならない存在となったカーボンファイバーは、どのように開発されて使われてきたのでしょうか。19世紀末にトーマス・エジソンとジョセフ・スワンが木綿や麻などの繊維を焼いてフィラメントとして使おうとしたのが、カーボンファイバーの始まりとされています。しかし、タングステンのフィラメントが作成して使用されたために、カーボンファイバーが使われることはありませんでした。

その後50年近くカーボンファイバーが注目されることはありませんでしたが、1959年に米国で宇宙開発のために耐熱性の高いカーボンファイバーが生産されるようになると、日本でもカーボンファイバーを開発・製造をする動きが出てきます。工業試験所や大学で製造方法の研究が進んで、PAN系のカーボンファイバーを製造するための基本原理が発表されたり、ピッチ系のカーボンファイバーが発表されています。

日本人が発明したPAN系カーボンファイバーとピッチ系カーボンファイバーは、現在でも使用されています。このような研究成果を応用して国内の企業が少しずつ生産を開始し、1970年代になると本格的に商業生産をする企業が現れるようになり、カーボンファイバーが航空機の構造材に採用されると大きな話題となりました。さらに、1980年代にカーボンファイバーの製造するためのコスト低減や加工方法が進歩すると、ロケット・航空機・レジャー用品など、使用される分野が飛躍的に拡大するようになっています。


21世紀に入るとカーボンファイバーの性能が向上して信頼性が高まると共に、今までの材料に代わって利用されるようになりましたが、特に自動車業界は二酸化炭素の削減や車両の軽量化をすすめるために、カーボンファイバーの利用に積極的に取り組んでいます。そして、世界的に市場が拡大を続けるカーボンファイバーのシェアは、長期間継続して開発製造している日本企業が半数以上を占めています。


■4.カーボンファイバーを使った製品

すぐれた機能を備えたカーボンファイバーは、さまざまな分野の製品に使われています。代表的な用途としては航空機や宇宙開発用ロケットなどがあり、従来の材料よりも軽量でありながら強度も高い材料であるために、数多く使用されるようになっているのです。

民生用

カーボンファイバーのような軽量な材料を用いて機体を製作することでより性能の高い機体が実現できますし、製作する際にも作業の効率化を図ることが可能となりコストの削減ができるようになっています。さらに、カーボンファイバーの価格が低下するにつれて、自動車・自転車・エレクトロニクス産業用の部品などにも使用されるようになりました。環境問題と低燃費化への対応が急務となっている自動車産業では、車体を軽量化できるカーボンファイバーを用いることは、排出する排気ガスと使用する燃料を少なくすることにつながっています。

世界的に環境に対する問題意識が高まる中で、カーボンファイバーを材料とした車体に大きな期待が寄せられています。また、自動車と同じく軽量化が重要となる自転車でも、アルミフレームよりも3割近く軽量化可能なカーボンファイバーは非常に魅力的な材料とされています。カーボンファイバーによって軽量化された自転車は、乗る人への負担も少なくより速く長時間走ることが可能となりますので、自転車競技や趣味でサイクリングを楽しむ人たちの注目を集めています。エレクトロニクスの分野ではカーボンファイバーの軽くて強いという特性に加えて導電性を利用したパイプなどの部品も広く使われています。

カーボンファイバーの特徴をいかした部品が、今までにない装置を製作するのに役立っています。その他にも、医療・レクリエーション・文房具など、さまざまな商品にカーボンファイバーが用いられて生活を豊かにするのに役立っています。今後はより有効にカーボンファイバーが使えるような技術が誕生して、より多くの分野で活用されるようになるでしょう。



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