カーボンとは

カーボンとは「炭素」のことで、元素記号は「C」。炭素は地球上に多く存在する原子で、 空や海には主に炭酸ガスとして、地中には主に岩石、石炭、石油として、生物の中には さまざまな有機物の形で存在しています。炭素原子のみでできた集合体としては、天然黒鉛やダイヤモンドなどとして存在しています。 このように、元素としての炭素を「カーボン」という以外に、以下のような加工物についても略して「カーボン」と呼んでいます。

天然黒鉛や主にコークスから工業生産される「人造黒鉛」や「無定形炭素(炭素質カーボン)」、電気炉製鋼において鉄の再生に使われる「黒鉛電極」、工業原料としての「煤」であり、タイヤの補強材などに使用される「カーボンブラック」、太陽電池や半導体など新エネルギー関連用の他さまざまな用途の素材として用いられる「ファインカーボン、書類の間に挟み複写を行うために用いる感圧複写シート「カーボン紙」。「炭素繊維(カーボンファイバー)」、または炭素繊維を用いた複合材料「炭素繊維強化プラスチック (CFRP)」、「炭素繊維強化炭素複合材料」、ナノチューブ炭素を素にした微小繊維「カーボンナノチューブ」などがあります。

このように、カーボンは熱的にも化学的にも極めて安定な物質なので、古くからいろいろなことに使われてきましたが、特に導電性があることが判ってから さまざまな分野に用途が広がってきました。特に近年、半導体や、エレクトロニクス分野などで需要が高まっています。


また、炭素製品等とは別の意味での使い方になりますが、「二酸化炭素(CO2)」を「カーボン」と略すこともあります。「カーボンオフセット」などという言葉をよく聞きますが、それは地球温暖化の原因といわれる二酸化炭素を減らそうとする取り組みのひとつで、日常生活や経済活動の中でどうしても排出してしまう二酸化炭素(カーボン)を、他の場所で行われるCO2削減活動に投資することで埋め合わせ(オフセット)する、というものです。



<目次>

1)カーボンの特性
2)カーボンの歴史
3)カーボン製品
4)カーボンブラック


■1.カーボンの特性

カーボンとは、「炭素」のことです。炭素材料を熱処理していくと、最終的には黒鉛結晶になりますが、原子の配列が安定しているため、高温になっても結合が乱れることはありません。そのため、カーボン製品は熱に強い特性を持っているのです。

近年では、「カーボンナノチューブ」という新素材が脚光を浴びており、半導体チップへの実用化などに期待がかかっています。このように、カーボンは生活に欠かすことのできない材料であり、さらなる可能性を秘めているともいえます。それでは、カーボンの具体的な特性を挙げましょう。

1)熱に対する性質が優れている。
耐熱性、熱伝導性があり、急激な熱変化にも耐えられ、ほとんど損傷しません。高温での寸法変化が少なく、また、高温下で強度が増します。還元性雰囲気中で約3000度、酸化雰囲気では約400度まで使用できます。

2)電気を通す性質
モーターのブラシや電池の電極、パンタグラフのすり板など、各種の電極材として電気部品に使われているのは、この電気を通す性質があるからです。また、グラファイトの電気抵抗を利用して、電磁誘導加熱の発熱体や、直接電気を流して高温炉の発熱体としても使用できます。

3)軽量で加工が容易
アルミよりも軽く、精密な機械加工も容易にできるので、さまざまなパーツに使えます。

4)耐薬品性がある。
常温の場合なら、ほとんどの酸やアルカリに耐え、ガラス、石英とも反応しません。また、ほとんどの融解金属と反応しない性質があるため、発熱をともなう薬品を使う場所で利用されています。

5)自己潤滑性がある。
自己潤滑性で相手部品をいためないので、機械用軸受や摺動シール材等で使用されています。

6)溶融ガラス・溶融金属に濡れにくい
溶融物が浸透しないため、ガラス製造用部品などに使用できます。

このようにカーボンには、他の材料には無い優れた特性があるため、半導体・電機・自動車、航空宇宙などの各産業で幅広く使用されています。

医療機器



■2.カーボンの歴史

2世紀ごろの中国の漢詩に「青松の煙の煤から墨を作った」と書かれており、古の時代より黒色顔料としてカーボンが使われたことがうかがえます。ヨーロッパでもすでに15世紀には、煤が印刷用インキとして広く普及。16世紀には天然黒鉛を細長く切り出して鉛筆の芯として使われ始め、18世紀末には木炭が導電性を持つことが判明しました。

19世紀末にトーマス・エジソンとジョセフ・スワンが、木綿や竹を焼いて作った炭素繊維を用いて、電球を発明しました。これが、カーボンファイバーの始まりです。その他、ボルタ電池の電極、発電機のカーボンブラシなど、カーボンは急速に使われるようになりました。

日本には1853年に、アメリカ人のペリーが徳川幕府に電池付きで電信機を贈りましたが、これこそカーボンが使われた最初の工業製品と言われています。その後1884年、東京で小沢電炭製造所が 一次電池や乾電池の陽極を製造したのが日本でのカーボン製造の始まりとなっています。

大正に入ってからは国内メーカーによって、製鉄向けの電気炉用電極や電解ソーダ用電解板などの大型炭素材の製造が始まりました。昭和に入ってからは、軍需産業の拡大につれ、カーボン業界も伸張期を迎えましたが、第二次大戦末期には戦禍を受けて停滞してしまいました。

1961年、大阪工業技術試験所の進藤昭男博士が炭素繊維を発表しました。これがPAN系高性能炭素繊維の始まりです。続く1963年、群馬大学の大谷杉郎によりピッチ系炭素繊維が発明されました。このように、CFRPの歴史は、日本からと言ってもよいのではないでしょうか?

1970年代以降には、強化プラスチックの補強材や複合材料の素材として使われ始めるようになりました。1980年代以降、製造コストの低減や加工方法の進歩が見られ、ロケットや航空機などの大型輸送機器からテニスラケットや釣り竿など、さらには剣道の竹刀や弓道の弓など武道の分野にまで応用の幅を広げていきました。

さらに2006年には、国内メーカーが、機体の大部分に利用する世界初の旅客機開発のため、カーボンファイバーを16年にわたって供給する長期大型契約を締結し、注目を集めています。

■3.カーボン製品

カーボン製品の特徴は、熱に強い、電気をよく通す、熱膨張が小さい、潤滑性がある、薬品に強い、機械加工が容易など、多くの利点を持っています。

主な用途は、宇宙航空材用、原子炉材用、電子工業材用、特殊高温炉塔、特殊槽、各種カーボンブロック、各種カーボンレンガ、炉過器、発熱体、陽極、特殊電極、コンタクト、軸受、シールリング、パッキング、すり板、鋳型、ダイス、ノズル、ボート、冶具類、ロール、滑り板、保護管、吹込管、加炭材、黒鉛シートなどさまざまな分野で使用されていますが、カーボン製品はいくつかに分類されます。

○カーボンブラック
タイヤを含むゴム製品を作るためにカーボンブラックは欠かすことができません。また樹脂の着色剤、各種インキの黒色顔料としての着色用途や、電線被覆材等への導電性付与剤としての役割も担っています。

○黒鉛電極
鉄を溶かす電気炉で使用される電極に使用されています。大径化と大電力操業に耐えられる強度や熱衝撃に耐える特性を持った高品質な素材で、その要求をみたせるのがカーボン製品の「黒鉛電極」です。

○ファインカーボン製品
日々の暮らしの中で、意外とファインカーボン製品が存在していることは知られていません。携帯電話に使用されている化合物半導体や信号機のLED、DVDの信号読み取りに使用される半導体レーザーの分野での製造部品。また、プラスチック製品の射出成形型の金型加工用電極材として活躍しているなど、金型産業には無くてならないカーボン製品です。さらにハイブリットと車の蓄電部分、太陽光発電ための半導体素子など、環境・新エネルギー分野でも使われています。

○摩擦材
自動車、オートバイ、建設機械などにとって動きを止めるブレーキ、その反対に動きを伝えるクラッチに使われる摩擦材です。

○工業炉およびその他関連製品
このように、カーボン製品は、日用品を作るための金型や、何かを作る際の製造機械の治具・工具、 産業機械や家電製品の部品として多く使われているほかに、生活に密着して使われています。

産業用機器


■4.カーボンブラック

カーボンブラックとは、一般的にはあまり知られていない製品ですが、原料の油を不完全燃焼させることで造られる「煤状」の化学生成品です。色は真っ黒で非常に軽く、扱いにくい製品ですが、製造が始まって以来、1世紀を超える歴史のある工業製品です。

カーボンブラックは、直径3~500nm程度の炭素の微粒子で、化学的には単体の炭素として扱われていますが、その表面にはさまざまな官能基が残存した、複雑な組成を持っています。そのため、カーボンブラックは、粒の大きさ、粒子のつながり、表面性状(官能基)をコントロールして加工することで、黒度や塗料との親和性を変えたり、導電性を持たせたるなど、さまざまに特性が大きく変わります。

特に、粒子表面の官能基を制御することによって、ゴムとなじみがよい性質を持たせやすくなるため、カーボンブラックの大半は、自動車タイヤ、航空機タイヤ、自転車タイヤ、ベルト、ホース、自動車などのゴム製品の補強材として添加されています。


また、少量ですが、黒色顔料として新聞など印刷物のインキ、塗料に使用。また、導電材として乾電池、静電気防止用建材、プラスチック、IT機器用タッチパネルなどにも使われています。その他、私たちの身近なところでは、コピー機のトナー、化粧品のマスカラやアイライナーへの添加材、食品着色料、墨汁などがあり、知らず知らずに身に付けたり使っているものでもあるのです。

日本でのカーボンブラック工業の歴史は1931年、当時日本の領土であった台湾で生産が始まりました。そして1941年から日本国内で次々に国産メーカーが創立され、戦後は多くの企業がカーボンブラック製造に参入。自動車産業の成長とともに発展してきました。

現在の日本国内におけるカーボンブラック生産量は、年70万トンあまりで中国、米国に次ぐ3位です。しかし自動車やタイヤ生産の海外移転が加速しつつある中、カーボンブラック業界も対応を迫られているようです。



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